donuthole.org / novels / 学芸会のおわり / 1章-1

ゆりゆり学園異能ラノベだと思います。
たたかいません。

続き
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1章

1

 亡くなった祖父の死から二日がすぎ遺言状の中身が親族のあつまるまえで読みあげられる。遺産の扱いや彼の残した業績とそれにまつわる資料やその他の扱いがわたしに関係しないのはわかっているし、金銭的な面で影響しないこともわかっていたから一同があつまるなか退屈そうにしている姪の相手をして読みあげが終わるのをまっていたけれど、末文にはわたしに関わる些細な記述があり、それから先の生活を決定づけることになった。
 死んだ、生前はどこかの研究所にいたという科学者が死に際して遺産の取り扱いくらいのことを書き残すのは意外ではないけれどまだ生きている、人間に干渉するようなことをするというのは意外だった。
 わたしのほかに彼の死後、その生に干渉するような遺言を残されたひとはいなかった。わたしだけという理不尽や、別にもうくたばった人間のいうことを気にする必要はないと思いながらも、彼が研究所を辞したあとつくったという学校へ転校するというのは面白そうだと思えた。
 遺言の他に別添の資料としてその学校のことをまとめた資料のはいった封筒を父に手渡された。封筒にはわたしの名前があり、その横にわたし以外のものの開封を禁じると朱筆してあった。父は封筒を両手にもって茶色い表面をながめるわたしを見おろしながら(彼は背が高いが、わたしは低い)不安そうに転校するのかと訊いてきたけれどまだ中身をみていないのだから答えようがない。祖父の死体がまだ棺桶に収まったままの部屋を辞して、広い屋敷のなかでひとりになれる場所をさがした。
 資料には学校の所在地や敷地や校舎などのスペックが長々と十数枚にわたり書いてあるだけで、どういうところだという説明はなかった。埒があかないので学校名で検索をかけたが情報の載ったページはほとんど出てこなかった。出てきたのは町役場と建築会社のものだけで、学校について、内部のことは出てこなかった。実在も怪しかったけれどその地点の衛星写真をみれば学校のような建物はあるけれど解像度が低くその辺りに人がいるのかは確認できなかった。資料を繰ると最後の一枚にはまたわたし以外が読むことを禁ずるとの旨朱筆してあったけれど、封筒を既に開いたひとならそんなことは気にしないだろうと思う。
 一枚の紙のなかに学校の設立目的とこれが書かれた当時在籍している生徒の一部の簡単な情報、右肩の日付は半年ほど前のもので、生徒の情報はわたしがもし転学するなら机を並べるであろうひとたちのものだった。そして最後の数行には彼の個人的な感情が記してあった。科学者であるような彼が感情のことについて書いているのはいい気持ちがしなかったけれど遺言だからだと読んだ。
 大したことはことは書いていなかった。研究に対する悔恨と、それの最後について見届けて欲しいとあった。それから先のことはなかった。卒業ののちそのことを公表しろだとか、自分の目で確かめたことをどうとかはなかった。それがあったら、転校しようとは思わなかっただろう。彼の末期の言葉に何かを思うことはなかった。ただ、いまの学校に飽きて、違う環境に行けば違うことがあるだろうという程度の思いだった。学校は私設の、無認可のもので教員たちも研究所を辞めたあと行くところのない人たちを雇っているだけということだった。未来なんてないのだから、今更高校卒業のことや、それから先のことを考えはしなかった。
 そうして、あの、怪物の君臨する学舎へいくことになる。