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1章2節その4

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 船は小さい埠頭につけられ、シィギさんがエンジンをきり縄を結ぶのを待った。見上げると低い山と高い山があり、低いほうの山の頂上に白い建物がたっている。衛星写真でみた通りだったけど、現実にみるほうが鮮やかだった。それと、木々がこんもりと茂る山の斜面に学校へ続く道と花の咲いた草原が見える。花は同じ種類のものなのか白っぽい色で斜面の一帯をおおっている。そこだけがこんもりとした木々のなかでくぼんでいるようにみえる。誰かが植えたのだろう。
 いったことのある海といえば関東圏の大きな海水浴場しかなかったので(フジツボのびっしりとついた)埠頭のかげの海水が透きとおっているのにおどろく。
「海、綺麗なんですね」
「うーん、どうなんだろう。ここ以外の海にいったことがないからわからないかな。でも、よしのがそういうならそうなんだろうし……周りに島もないから水がよどみにくいのかな。潮流とかはわからないけどね。でもでも、淡潮って名前なんだからあんまりつよい流れはないのかな。あとで杏里と千尋に訊いたらわかるかも。千尋っていうのは、よしのと同じクラスの子で、杏里はあたしと同じクラスのひとだよ。ふたりとも魚とか海とかに詳しいんだ。今年の研究テーマもそれにするんだってね。アクアリウムとかつくって……」
 菜摘先生とシィギさんはもう島のほうへ歩きだしている。あやなは特に気にしないで島のことを説明してくれる。学校についてから手続きとか説明があるのかなとも思うけれど、ないのかもしれない。一応、学校ではないらしいし、難しい手続きはないのだろう。たぶん。
 先生たちは海からすこし離れたところに停めた軽トラックのまえで待ってた。シィギさんが運転席にすわり、菜摘先生は荷台にのっている。案外子どもっぽいひとなのかもしれない。子どもっていっても島のそとのことで、ここの子どもたちとは違うのだろうけど。
「私たちはすぐ学校へ戻りますけど、宗像さんたちはどうしますか。島をみてまわってからのほうがよかったらそれでもいいですし」
「どうする、よしの」
「すこしみてみたいかな。初めてきたところだし」
「そうですか。じゃあ、今日のことはひとまず寄宿舎のひとにきいてください。荷物も運んでおきますね。詳しいことはまた明日」
 菜摘先生がそういうと軽トラックは去っていった。
「ごめんね、付き合わせちゃって」
「いいよー別に。どっかみたいところとかあるかな? お姉さんが案内してあげますよ」そういってあやなさんは笑う。
「うーん。見てまわりたいっていったけど何があるかはわからないですね。どこかおすすめのところとかあります?」
「何もない島だしねー。みてまわるところはないかな。飛行場はあるけど、島の反対側だし、昔ひとの住んでたところもそうだしねー。そこの花畑くらいしかないかな」
「じゃあ、そこでお願いします」
「かたいね、よしの。お願いします、なんて。もっと普通でいいよ」
 本当に学校以外に人が住んでいないみたいで、船着場から学校へ続く道を歩く途中、誰にもすれ違わなかった。建物のあともなく(人が住んでいたのは島の反対側だそうだけd)、車一台が通れる幅のひび割れたコンクリートの道以外人の手がはいっていなくて鬱蒼とした森になっている。
「熊とかでないんですか」
「出るらしいよー。あたしはみたことないけどね。あっでも、鹿はみたことあるよ。結構いるみたい」
「へー。怖いですね」
「まあ、そうそう出るものじゃないしだいじょぶだよ。もし、出てきたら死んだふりしようね」
「死んだふりってあんまり意味ないってききますが……」
「まあまあ。あっ、そろそろつくよ」
 木々にさえぎられた道が途切れ、暗い森のなかから光のさす花畑にでる。