donuthole.org / novels / 廃屋に花 / 1章-3

120830(Thu) 21:53:00

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 日が暮れるまでそうしていた。日没をすぎ、出窓から差す最後の光線が消えて、ベッドに横になるふたりは影になる。
「制服、しわになっちゃったね」彼女がいう。まなじりが下がる。絡めた指を握ったり緩めたりする。
「大江さんに頼むからだいじょぶ」そういって、今日は終わり。太腿まで露わになり乱れたプリーツ手のひらで払い、立ちあがって制服を脱ぐ。
「今日はどうするの」
 泊まっていくか、と訊く。サーシャのうちはお父さんがいなくて、お母さんは帰りが遅い。だから、うちで夕飯をともにすることが多いし、そのまま泊まっていくことも多い。
「一緒にいる」
 泊まっていく、といわないのは彼女の言葉遣いの特徴だ。「じゃあ、客室はいいね」泊まるときには、わたしのベッドで眠るときと客間で眠るときがある。「うん」翌朝は、電車に乗って学校へ行く彼女を駅まで自転車で送ってゆく。
 制服の棒タイをほどき、ボレロとジャンパースカートは椅子にかけておく。靴下も脱ぎさり椅子においておく。クローゼットの真んなかの段から部屋着をとりだし、羽織ってゆく。彼女はわたしが着替える姿をじっと見ている。なんだか、気にいっている所作なのだそうだ。そうやって、きれいに服を脱いでいくところがお姫さまみたいと彼女はいう。けれど、お姫さまだったら着替えはひとにしてもらうのだろう。かずみに着替えをさせてもらうところを想像するけれど、なんだか恥ずかしいなと思う。
 わたしが着替え終えてから、彼女も制服を着替えはじめる。同じようにリボンをとり、吊りスカートを足元に落とす。ブラウスのボタンをひとつずつ外してゆく。たしかに、ボタンを外す指はすこしぎこちない気がするけれど、わたしと変わらない所作の気がする。スリップ姿の細い脚のふちがかすかな光を浴びて光る、ゆっくりと歩きだし、クローゼットを開ける。うちに泊まることの多い彼女はクローゼットの一段に部屋着や寝間着をおさめている。着替えを終え、伝声管に向かって夕食の支度を訊く。