donuthole.org / novels / 廃屋に花 / 2章-8

120916(Sun) 20:58:21

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 昼食は材料がないということでお弁当で、食堂はないのでリビングでたべる。すみれさんはこちらへ越してからあまり別荘のほうへきてはいなくて、ソファはすこしかびのにおいがしたけれど、それもまた魔女のすみかのような顔をしている。ひとりで客間を掃除したあとだけれどかずみはまったく疲れた風をみせずに給仕をする。お弁当はお皿をもってきたりさげたりする必要もないので食器とお茶を配りおえると彼女もソファに座って食卓を囲む。
「お部屋、どうされますか」
 昼食会も終えると、かずみに訊かれる。すみれさんは私室を、菊太郎はいつもつかっている部屋があるというけれどわたしたちの部屋は決まっていない。結那はわたしを上目遣いにみる。
「二階の屋根裏部屋の反対のほうってつかえるの?」すみれさんに訊く。
「そっちのほうは客室になっているからあいてるわよ」
「じゃあ、そっちのほうを。部屋割りは……そうだね。結那は一緒の部屋がいいかな」
 そういうと、あからさまにほっとした顔をする。やっぱり、怖がらせすぎてしまった。
「私もいっしょがいい!」
「ベッド、狭くありませんか?」
「ううん。一緒がいいな。ベッドは狭くても」
 こういった差配もお姫さまのすることかもしれない。お姫さまというより、お屋敷を切り盛りする女主人のようかもしれないけれど。
「では、反対側に使用人室があるのでわたしはそこをお借りしています。夜、何かありましたらそちらへおねがいします」
 かずみが荷物を部屋に運んでくれてからわたしたちも部屋をみにゆく。廊下は陸のほうへ面しているので、風にそよぐ日に焼けたカーテンの向こうには海がみえる。このお屋敷も移築されたものだというけれど、そのときにきっと変えたのだろう、窓は大きく、多くの陽をとりこむ部屋だった。
「ほら、この部屋なら明るいし、おはけもこないよ」
 海には何隻か船が浮かんでいる。波打ち際は磯になっているらしく、赤松が茂り、鳶が飛び、海にきているんだと実感する。
「どうしよっか、明日は水族館とかへいくらしいけど、今日は予定もないし」